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D・プレマック、A・プレマック 著
長谷川寿一 監修 鈴木光太郎 訳


心の発生と進化
――チンパンジー、赤ちゃん、ヒト


四六判464頁

定価:本体4200円+税

発売日 05.05.25./p>

ISBN 4-7885-0952-0

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◆進化心理学の精華◆
チンパンジーに文字を教えて世界に名を轟かせたプリマック夫妻が、チンパンジーと人間、とくに人間の赤ちゃんとの比較をとおしてヒトの「心」の発生と進化の謎に挑んだ力作です。道具が使える、簡単な数が認識できる、他者の心が読める等々、チンパンジーはほかの動物にはない高い知的能力をもっていますが、それでも人間の赤ちゃんが生得的に備えている知的能力には遠く及びません。先祖を同じくしながらこのような相違はなぜ、どのようにして生じたのか、ヒトの心はなぜこれほど高度に進化してきたのか。夫妻は、自分たちの研究成果を中心に、新しい進化心理学が明らかにしてきた数々の興味深い事実を集大成してこの挑戦的な問いに答えます。「心の進化論」の誕生です。

◆関連書
進化心理学入門ジョン・カートランド著

◆書評
2005年6月26日、日本経済新聞、榎本知郎氏評
2005年7月24日、朝日新聞、天外伺朗氏評

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◆目 次◆
序章 ヒトは昔、狩猟採集民だった
1章 モジュール--ヒトがもつ生得的装置
2章 模倣--過去を繰り返す
3章 教育--美からの出発
4章 文--行為とモノ、名詞と動詞
5章 単語--情報を引き出す装置
6章 信念--常識から抜け出せないでいる概念
7章 心の理論--他者の心の状態がわかる
8章 因果--「リンゴ・?・切ったリンゴ」
9章 アナロジー--チンパンジーにアナロジーを教える
10章 等価性--発見の道具
11章 教育への示唆

訳者あとがき
文献/事項索引/人名索引

原題:ORIGINAL INTELLIGENCE Unlocking the Mystery Who We Are by Davud Premack and Ann Premack


◆本文紹介◆
ヒトの知性を示す最初の知しるしはなにで、それはいつごろ現れたのだろうか?アウストラロピテクスとホモ・エレクトゥスの両方が、この疑問に答えてくれる。答えのひとつは多少推測が混じっているか、もうひとつはかなり確実な証拠にもとづいる。
 アウストラロピテクスの脳は、チンパンジーの脳とほぼ同じ大きさだったが、その構造はおそらく違っていた。というのは、アウストラロピテクスは簡単な骨の道具を(おそらくは石の道具も)使っており、もしかするとそれらを加工していた可能性もあるからである。アウストラロピテクスが残した動物の骨には、切り込まれた痕が見られることがあるので、この痕から、これらの道具が骨から肉片をはがすために用いられたことがわかる。自分の歯を使わずに、道具を用いて骨と肉片を切り離すことは、動物からヒトになるための重要な一歩である。とはいっても、動物の骨に残された道具の痕跡から、どんな知的能力があったかがわかるわけではない。それらは、知性についておぼろげなことを教えてくれるにすぎない。特定の能力の存在を示しているのはホモ・エレクトゥスである。・・・
 初心者に教えるには、ことばが必要だろうか?厳密に言うなら、なくてもよい。しかし、興味深いことだが、ホモ・エレクトゥスはおそらくことばをもっていた。ホモ・エレクトゥスの頭蓋の化石から、ヒトの脳のおもな言語野のひとつ、ブローカ野がすでに存在していたということがわかるのだ。言語を用いなくても教えることはできるが、言語を用いれば、その効率を飛躍的に高めることができる。教えることは言語以前に進化したと私たちは考えているが、教育は言語のもたらす利益を増やし、それによって言語はさらに進化をとげた。言語をもたずに教える動物種がいないこと、そして言語をもちながら教えられない動物種がいないことは、おそらく偶然ではない。
 さまざまな知見を総合すると、ホモ・エレクトゥスは、ヒトを特徴づける3つの認知能力をすべて備えていたようだ。その3つとは、模倣、教育、そして言語である。これらの能力こそ、ヒトの社会的知能の核を形作り、ヒトが世代から世代へと知識を伝えていくのを可能にしたのである。(「序章 ヒトは昔、狩猟民族だった」より)