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唐 権


海を越えた艶ごと
――日中文化交流秘史


四六判400頁

定価:本体3200円+税

発売日 05.4.25

ISBN 4-7885-0944-X

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◆旅情と欲情の日中交流史◆
中国人の理想に「洋館に住み、中華料理を喰べ、日本婦人を妻に」というのがありますが、この日本女性への憧憬は、何故、いつ頃からあるのでしょうか。本書は、元禄から明治にかけての二百年間、清朝中国に巻き起こった日本の遊女、いわゆる「東洋妓女」ブームに注目し、その歴史を探ります。長崎唐人屋敷の繁華、魔都上海の東洋茶館の隆盛、王韜ほか中国文人たちの「風流」を求める放蕩不羈な人生観…。東洋妓女は、春をひさぐだけではなく、琴棋書画、詩詞歌賦を嗜む才女として、多彩な交流の担い手、文化の創造者でもありました。政治外交や交易という大きな歴史的文脈からは見えてこない、その時代を生きた人々の息づかいが聞こえてくる、もうひとつの日中文化交流の歴史世界が鮮やかに甦ります。図版多数。

◆書評
2005年、週刊ポスト、井上章一氏評
2005年6月26日、亜日新聞、加藤千洋氏評
2005年7月24日、毎日新聞、田中優子氏評

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◆目 次◆
序章
第一部 「遊興都市」長崎へ--清客たちの日本旅行一六八四〜一八三〇
第一章 遊楽に出かけた清客たち
第二章 縮めらた距離--江南から長崎まで
第三章 江南部の娯楽事情
第四章 清客と遊女の「情芸」世界
第五章 抑圧と歓待--幕府政策の両面
第六章 「寄合町諸事情上控帖」について/二つのグラフが反映した真実
第一部小括
第二部 「異域花」--東洋妓女と清末上海社会
第七章 都市文化の背景
第八章 洋妾時代
第九章 東洋茶館の誕生
第十章 都市繁盛記のなかの東洋茶館
第十一章 花榜のなかの東洋妓女
第十二章 東洋妓女に対する法律統制(一)
第十三章 東洋妓女に対する法律統制(二)
第二部小括
第三部 上海文人の「日本」発見--王朝の日本旅行とその周辺
第十五章 日本旅行と上海ネットワーク
第十六章 上海文人としての王韜
第十七章 王韜と日本
第十八章 王韜の日本旅行--『扶桑遊記』の世界
第十九章 新しい日本像を創造する
第三部小括
終章
注/あとがき
人名索引/事項索引


◆本文紹介◆
そもそも日中両国の民間往来は、十九世紀に入ってから始まったことではない。九世紀の記録にすでに見られる中国商船の日本渡航は、明代後期になると大規模な展開を見せはじめた。明清の王朝交代以降、紆余曲折を経て康煕二十三年(一六八四)に清朝朝廷は展海令を発布し、これをきっかけに中国人の長崎渡航ブームが起きた。その後、幕府が唐人屋敷を設置して、中国からの来訪者を隔離・収容することにしたが、その過程の中で、特別な存在として登場してきたのが、他ならぬ丸山遊郭の遊女であった。というのは、唐人屋敷を出入りする自由が与えらた日本人といえば、唯一、彼女たちだけであったからである。江戸時代を通して、渡崎清人と丸山遊女の邂逅が、同時代のほかのどのような両国間に人的往来よりも、ずっと盛んで、規模もずっと大きい交流の形式であったことは、れっきとした事実である。
 東洋茶館が牛荘の街にはじめて現れたのは一八九〇年のことである。しかし、東洋茶館の内部で起きたさまざまな人間ドラマは、その二百年前に長崎唐人屋敷の舞台ですでに開演していた。場所こそ異なるものの、中国文人の目には、両者とも同じドラマの一部として映ったに違いない。そして以下の物語も、まず清代中国人の長崎体験から始めなければならない。(「序章」より)