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中山眞彦 著


小説の面白さと言語
 ――日本現代文学とそのフランス語訳を手掛かりに


四六判224頁

定価:本体2400円+税

発売日 04.12.18

ISBN 4-7885-0929-6

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◆小説を読むことがますます愉しくなる◆
小説の面白さとは何か? それは日常的な文章の面白さとどう違うのか?  この素朴な疑問に、村上龍、村上春樹、津島佑子、吉本ばななのよく知られた 作品(『コインロッカー・ベイビーズ』『羊をめぐる冒険』『光の領分』『キ ッチン』)とそのフランス語訳とのズレ・誤訳を手掛かりに答えます(フラン ス語訳を使いますが、フランス語を知らなくても読める仕掛けがしてあります)。 つまり、このようなズレのなかに〈わたし・ここ・いま〉を表現する小説の言 葉が日常言語のなかから立ち上がる瞬間を捉えて、小説の言語とは何かを探り ます。小説を読む楽しさを意想外の切り口で教えてくれるユニークな試みです。

◆本文紹介◆
小説(ロマン)のと呼ばれるテクストを、読者の私はどう呼んでいるのだろうか。私の読み方ははたして正しいのだろうか。気になるところだ。そこで、世間に流布している作家論・作品論の類に目を通す。自分でも感想文めいたものを書いたりする。どちらもいまひとつ納得がゆかない。所詮は近似値を差し替えているだけではないか。そもそも絶対的に正しい読み方というものが、どこかにあるだろうか。この疑問がその不毛性とともに一挙に解消する方法がある。おそらく誰も実行したことのない方法だ。すなわち、いま呼んだページを閉じて、そこに書いてあった文章を自分のペンで再現することである。まったく同じものが書けるはずはない、ずれや違いがあるに決まっている。そのずれと違いこそは、まさしくあなたがテクストを読み違えた印なのだ。・・・小説の読者はいつも文字も一歩先を見ている。その読者に向かって、いま目にしたテクストを自分で再現しろと要求するのは、後ろ向きにい歩けと命令するのに等しい。ところが、この理不尽な要求に進んで応えている一つの営為が存在する。翻訳がそれだ。翻訳者は、原文テクストの一字一句をすべて確実に読み取り、異言語の障害をも乗り越えて、それを正確に再現しようと努める。翻訳という作業のこの厳密さに照らして思い至るのは、やはり小説テクストにおいても、いま書きつけられたこの文字はこれから語られるべきものを予測し、呼び寄せる、決定的な働きをしているという当然の事実だ。一字でも間違えれば小説の進路は乱れる。実に翻訳テクストは、小説を読むとはどういうことであるかを、一般読者に代わって示してくれているのだ。(「ロマネスクと言語」より)

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◆目次◆
まえがき
ロマネスクと言語 村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』
ロマネスクの冒険 村上春樹『羊をめぐる冒険』
化けものどもが語る言葉 津島佑子『火の河のほとりで』
ロマネスクの理と背理 津島佑子『光の領分』
物語とロマン 吉本ばなな『キッチン』
あとがき 
初出一覧
フランス語訳文一覧
装幀――虎尾隆

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