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マリオ・ヤコービィ 著/高石浩一 訳


『恥と自尊心』
――不安の現象学から精神療法へ


四六判264頁

定価:本体2900円+税

発売日 03.9.25

ISBN 4-7885-0874-5

◆恥感情は日本人の専売ではない!◆

恥は強烈な人間感情のひとつです。いつでもそこにあり、誰にもなじみ深いも の。ではそこから人間についてどんな認識が導かれるか? これは、著名なユ ング派分析家が、恥とその表われ、恥の不安と困難に共感に満ちた目をそそし で、人間の条件に迫った本です。神話・伝承や日常生活にみる恥の意識と体験 を深く掘り下げて人間存在の複雑なダイナミクスを解きほぐし、過度のおそれ と不適応という臨床的事例から、恥と自信・自尊心の発達との密接なかかわり へと遡ります。著者長年の臨床実践と思索がみごとに結晶した一冊です。



◆本文一部◆
 これまでは恥不安、すなわち恥をかきそうな状況への恐怖と、恥の影響について述べてきた。赤面したり、震えたり、口が聞けなくなったり、インポテンツになるなどといった恥ずかしい出来事は、もっぱら不安を喚起するような予期によって引き起こされる。不安によってわれわれは自由を奪われ、状況の要求に合わせる能力がうまく働かなくなる。そうして常に自分自身を監視のもとに置こうとするようになってしまう。例えば、インポテンツや不感症の予期不安があると、人は注意を相手に注ぎ込めず、むしろ自分自身に注目するあまり、結果として性的反応はさらに弱くなってしまうのである。同様に、愚かな行いをしないかと自分自身を監視したり、声や手の震えを不安気に見守ることで、自発性は全く妨げられてしまう。人は臆病になり、鬱積し、不安定になり、そして「自意識過剰」になる。こうして人は激しい恥の感情にとらわれ―空想であれ現実であれ―誰もが自分の苦悩を知って嘲笑うに違いないという思いに苛まれる、いわゆる「恥の陥穽」に落ちこむのである。……われわれは誰でも、みっともないことをしでかしてしまったという思いに苛まれて、眠れぬ夜を過ごすことがある。もちろん恥の閾値は人によって違うのだが、どうして羽目を外して、あんな滅茶苦茶なことをしでかしてしまってのだろう、どうして誰も興味を持たないようなことをあれほど熱っぽく語ってしまったのだろう、と反省することは誰にもある。結局、どれくらい恥を感じやすいか、どれほどそれを強く感じるかは、われわれが自分の影に対してどれほど耐性を持っているかによるのである。(「恥はいかにわれわれに影響を及ぼすか」より)



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◆目 次◆
はじめに
1恥と恥不安の現象学
恥と罪悪感の違い/不安と恥/恥はいかにわれわれに影響を及ぼすか/裸であることの恥
2恥の心理学的意味
聖書の楽園物語に見られる恥/恥の基本的機能
3自尊感情
人間の尊厳/自己概念‐自己感と自己の意識/自己感が組織化される諸段階‐ダニエル・スターン/人間的交流パターンの発生/自尊心の心理的発生/鏡映と理想像/自尊心と誇大事故/誇大自己と自我の同一化/野心を刺激する誇大自己と賞賛されたいという欲求/実現不可能な欲求をもたらす誇大自己
4恥と恥の感じやすさの心理的発生
生まれつきの感情としての恥/恥と自己感の組織化の諸形態/E・エリクソンによる恥の精神分析理論/「無花果の葉」と「魂の仮面」/ペルソナ(C・G・ユング)と偽りの自己(D・W・ウィニコット)
5さまざまな恥体験
劣等感コンプレックス/困惑と恥願望/屈辱感/マゾヒズム
6治療関係における恥という動機
分析状況に対する反応としての恥/セクシュアリティ/独身と孤独
7自尊心と恥の感じやすさにまつわる諸問題の心理療法
交流パターン、恥コンプレックス、および転移/恥と個性化のプロセス/白雪姫シンドローム/心理療法への結びの言葉

付録 自我と自己の概念―比較
注/文献/索引

原題:SCHAM-ANGST UND SELBSTWERTGEFUHL,1991

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