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加藤厚子 著

総動員体制と映画
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A5判340頁

定価:本体4500円+税

発売日 03.07.14

ISBN 4-7885-0866-4

在庫なし




◆映画は「弾丸」になりえたか?
日中戦争以降、「映画は弾丸である」というスローガンが官民を問わず流行しました。映画が戦争において果たす役割を、人々が認識していたということでしょう。しかし、政府の映画政策はその力を十分に引き出すことができたでしょうか。本書は、十五年戦争中、「映画国策」の名のもとに行なわれた数々の映画統制政策を、日本国内はもとより満洲、中国、南方、朝鮮、台湾などに広大な日本支配地域にわたって丹念にたどることで、「映画と国民国家」の密接な関係を説き明かし、戦後の日本映画の起源をも明らかにした力作です。著者はお茶の水女子大学助手、気鋭の映画史家です。

◆書評
2003年9月21日、日本経済新聞、古賀重樹氏評
2003年11月14日、週刊読書人、宇波彰氏評
2004年11月、日本歴史11月号、有山輝雄氏評

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◆目 次

はじめに‐映画国策とは何か
第一部 総合的映画統制への模索
一章 総合的映画統制構想の出現
二章 映画法制定による統制態勢の樹立

第二部 映画国策の確立と戦時国民動員の実施
三章 映画臨戦態勢による映画産業の再編
四章 制作から興行にいたる総合計画の形成

第三部 映画国策による国民動員の限界
五章 大陸における映画工作の展開
六章 日本支配地における映画工作の展開
七章 映画産業による自治的統制への移行
おわりに‐総括と展望


◆本文一部
一八九〇年代末に発明された映画は、文学・音声につづく映像という新たな伝達手段として、二つの側面をもって発達した。一つは情報伝達の側面であり,もう一つは娯楽の側面である。これは新聞、出版、放送といった先行メディアと同様であるが。映画の特徴はその発展過程が近代戦争と密接な関係をもち、また世界規模の市場を有する一大産業として急速に発達したことであろう。
 見世物として導入された映画は、日本ではまず娯楽として発展した。一九二〇年代には会社組織による映画興行が増加し、民衆の間にも最も安価で手軽な娯楽として普及していた。しかし、一九三〇年代後半に入ると、映画には娯楽意外の「役割」が期待されるようになる。その役割とは映画の社会的影響力を利用した戦時態勢への国民動員である。情報宣伝、教化、戦意昂揚といった映画が民衆にもたらす効果は第一次世界対戦時にヨーロッパで確認され、日本にもその情報が伝わってはいたが、現実性をもってそれが意識されたのは、日中戦争による国家総動員態勢構築の過程においてであり、そこで提唱されたのが「映画国策」であった。(はじめに)


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