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紅野謙介 著


投機としての文学
――活字・懸賞・メディア


四六判420頁

定価:本体3800円+税

発売日 03.03.20

ISBN 4-7885-0840-0

◆著書、論文
『書物の近代』(ちくま学芸文庫)、筑摩書房、ISBN:4-480-08527-0、1999.12
「文学研究・文化研究と教育のメソドロジー」『ディスクールの帝国』金子 明
雄ほか編、新曜社、ISBN:4-7885-0716-1、2000.4
「「国語」教科書のなかのナショナル・ヒストリー」『ナショナル・ヒストリ ーを超えて』小森 陽一ほか編、東京大学出版会、ISBN:4-13-003313-1、 1998.5
など

◆文学がまだ若くて元気だった頃◆
かつて、小説に「毎日懸賞小説」などのかたちで大々的に懸賞がかけられたり、一攫千金をめざして投機の対象とされた時代がありました。それはまた、投稿雑誌に作家志望者が群れをなし、あの漱石が彼らに代作を斡旋した時代でもあり、文学はまだ若く可能性にあふれていました。日清から日露をへて第一次大戦にいたる時代の、文学が商品とみなされ、文壇が形成されていった時代を、漱石、鴎外、秋声、百間、荷風、与謝野晶子、井伏、太宰などのテクストを活字・雑誌・新聞・書物などのメディア空間のなかで読み解きつつ描き上げた「文学の考古学」の試みです。

◆著者ホームページ
→  http://www.chs.nihon-u.ac.jp/jp_dpt/kohno/index.htm

◆書評
2003年5月4日、朝日新聞、坪内稔典氏評
2003年5月11日、琉球新報、上野昂志氏評
2003年5月16日、週刊読書人、菅聡子氏評
2003年6月7日、図書新聞、石原千秋氏評

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◆目次
はじめに
T 文学とメディア空間
懸賞小説の時代
中等教育の再編と「国語」教科の成立
『中学時代』から『文章世界』へ
戦争報道と〈作者探し〉の物語
文学への投機

U 活字の共同体
批評の文体と文壇共同体
漱石、代作を斡旋する
「史論」の言説
与謝野晶子における「文学の社会化」
文字へのフェティシズム

V テクストの痕跡
永井下風『アメリカ物語』
森鴎外『サフラン』
徳田秋聲『爛』
井伏鱒二『言葉』『ジョセフと女子大生』ほか
太宰治『富嶽百景』

終章
注/あとがき


◆本文紹介◆
本書を手にとって「文学」と「投機」という言葉の結びつきに抵抗を感じる読者もいるかもしれない。しかし、誕生したばかりの新聞にとって「相場」の上がり下がりを伝えることば重要な役割であり、その新聞に小説を掲載することで発展してきたのが日本の近代文学である。国民国家を生み出した産業資本主義の時代にあって、いかがわしさと通俗性は、小説を中心にした近代文学に欠かせない称号でもある。…(中略)…文学が元気だった時代、そう言ってもいいだろう。死んだ知識しか教えてくれない学校のなかで、学園雑誌が唯一の遊び場になった。やがてそこで満足できないものたちは、教師の目をかずめて、投書家になり、懸賞を狙った。物書きになれるかもしれない、小説家になれるかもしれない。そんな夢が夢として生きていた。そして夢のなかで、世界のとらえ方や言葉の組立て方、ひいては文学というイデオロギーをいつのまにか身に付けていった。実際には投書も懸賞小説入選も思い出のひとこまに終わった人々が大半であろう。しかし、その思い出を抱いたかれらこそ、文学の愛読者、文学に支えられ、かつ文学を支える実質的な担い手だったのではないだろうか。


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