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加藤 敏著

創造性の精神分析
――ルソー・ヘルダーリン・ハイデガー


四六判276頁円

定価:本体2400円+税

発売日 02.05.31

ISBN 4-7885-0808-7

◆思想も伝染(うつ)るんです
 ウィトゲンシュタインを思い出すまでもなく、世界を揺るがす思想にはどこか狂的なところがあります。本書は、一見正常な大思想家がいかに狂的な思想家に影響を受けているか、その思想的系譜をさぐったものです。ルソーという熱狂的な思想家とあの冷静な倫理思想家カントとの意外な類縁関係、狂的詩人ヘルダーリンに実存哲学者ハイデガーが傾倒していたこと、そしてニーチェとバタイユ、キルケゴールと西田幾多郎などの思想的影響関係をたどりつつ、狂気と思想、さらには創造性とのミステリアスな関係を説き明かした、「思想的系譜のエピ‐パトグラフィー」という新しい病跡学の試みです。

◆書評
2002年7月1日、日刊工業新聞
2002年10月8日、週刊読書人
2002年12月5日、精神療法Vol.28、内海健氏評

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◆目次
まえがき
序 章 創造活動における逸脱と癒し
 1 統計学的知見
 2 精神病理学からみた創造過程、創造行為
 3 時代病理の病跡学
第一章 近代の病理と創造の病い
 1 創造の病いの規定
 2 ルソーの概観
 3 市民社会との出会い――分裂気質者ルソーの顕在化、局在化
 4 ルソーの病いと創作
 5 主要著作がルソーにとってもつ意義とその病理性
 6 ルソーの挫折
 7 近代社会との出会いによる神話解放(運動)としての思想、宗教
第二章 詩人における「死への存在」の様態――ヘルダーリン
 1 予備的考察
 2 ヘルダーリンの生い立ち、精神病
 3 ヘルダーリンの基本的な存在態勢
 4 二種類の存在切迫
 5 精神病前および精神病後の創造行為
第三章 分裂病と宗教・女性
 1 文献の確認
 2 臨床
 3 分裂病性宗教妄想の成り立ち
 4 分裂病性宗教体験と非分裂病性宗教体験の比較
 5 女性化
第四章 分裂病の病理と創造――アルトー、ニーチェ、ヘルダーリン
 1 発病後創造過程――分裂病のはじまりの創造促進性
 2 創造行為のもつ主体解放の危険性
 3 創造行為の病前布置
第五章 思想的系譜関係におけるエピ‐パトグラフィー
――ハイデガーとヘルダーリン

 1 ヘルダーリンに対するハイデガーの傾倒
 2 ハイデガーの思想の師ヘルダーリン
 3 ヘルダーリンの定常点(「死の領域」)とそこへの飛びこえ
 4 ハイデガー哲学の狂気内包性
 5 ヘルダーリンを師とした「転移」的関係と創造性
第六章 エピ‐パトグラフィーからみた規範
――カントとルソー、スウェーデンボルグ

 1 カントの生い立ち、思想の概観
 2 カントとルソー(1712-17)
 3 カントとスウェーデンボルグ
 4 カントの「批判」的態度と創造
 5 カントにおける倫理規範の創造の意義
第七章 キルケゴールと西田幾多郎
――構造的メランコリーの観点から

 1 西田の思索の歩み
 2 キルケゴールにおけるメランコリー性内省と構造的メランコリーの受容
 3 西田幾多郎における自覚
第八章 狂気内包性思想の系譜
 1 思想における批判的立場と熱情(受難)的立場
 2 ラカンにおける狂気内包性思想
 3 狂気内包性思想の構成
 4 尖端的出来事への反復的回帰
あとがき
文献注
索引


◆本文紹介◆
天才的芸術家や思想家による優れた作品の産出が暴力性をもった未知の存在Xとの闘いの産物であるとみるなら、最終的に彼らはこの闘いに敗れ、未知の存在Xの暴力性に屈し、主体の心的組織の解体を余儀なくされたのである。ヘルダーリンとニーチェはいずれも自分の存在探求の行為のもつ主体解体的な危険をよく知っていたわけだが、この予感が見事に的中してしまう。もっともニーチェの場合、晩年の痴呆状態に脳梅毒による痴呆の側面が混入している可能性を認めねばならない。ニーチェに関しては、これまで、梅毒説や循環病説が出されたものの、いずれも満足のいくものではなかった。筆者としてはニーチェの創造性の様態、および臨床病状は分裂病の病理に良く合致すると考える次第である。(「第四章 分裂病の病理と創造」より)


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