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徳永 恂著


フランクフルト学派の展開
――20世紀思想の断層


四六判376頁

定価:本体3500円+税

発売日 02.05.30

ISBN 4-7885-0805-2

◆最もラディカルな近代批判
 ホルクハイマー、フロム、ベンヤミン、ルカーチ、アドルノ、ハバーマスなど、フランクフルトの「社会研究所」に集った巨星たちの仕事は、西欧近代文明への最もラディカル(根底的)な批判として、フーコーはじめポストモダンの思想にも大きな影響を与え、21世紀の今日まで、歴史の節目節目に噴出し、耳目を集める強靭な生命力をもっています。著者はこのフランクフルト学派研究の第一人者、学派全体の運動史を巨視的に鳥瞰しつつ、上記個々の思想家たちの自己の形成と変容の軌跡、相互の結束と離反の力学が生みだすアクチュアリティを迫力ある文体でとらえます。

◆書評
2002年7月27日、図書新聞、藤野寛氏評
2002年8月、出版ニュース8月上旬号


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◆目次
まえがき

背景
1章 フランクフルト学派小史
はじめに/ホルクハイマーと「批判的理論」/アドルノと『啓蒙の弁証法』/フロイトとマルクスの統合1/フロイトとマルクスの統合2

出発
2章 初期批判理論と精神分析 -1930年前後の社会研究所における思想的絵模様
はじめに/フロムと「社会研究所」の出会い/フロムと社会研究所の共働/傍流としてのマルクーゼとアドルノ/
3章 ルカーチ・ベンヤミン・アドルノ -亡命と転換の絵模様
方法としての星位図/星の配置を変える/ウィーンのアドルノ/哲学のアクチュアリティ

模索
4章 相即と不離 -ベンヤミンにおけるマルクシズムとユダイズム
不決断の構造/1924年夏 カブリ島/モスクワ往還
5章 小人と天使 -ベンヤミン『歴史の概念について』の射程
はじめに/テキストについて/小人とは誰か 第一のアレゴリー/天使とは誰か 第二のアレゴリー/小人=天使の時間性/おわりに
6章 フランクフルト学派と『存在と時間』-ベンヤミンをめぐって

権威と批判
7章 フランクフルト学派と反ユダヤ主義研究 -イデオロギーの変質
イデオロギーの機能変化と反ユダヤ主義/フランクフルト学派の「反ユダヤ主義」研究/『啓蒙の弁証法』における反ユダヤ主義の章へのコメント/フランクフルト学派の反ユダヤ主義研究の意義と限界
8章 ヘーゲルとホルクハイマーにおける家族と国家 -アンチゴーネオイディプス
はじめに/ヘーゲルにおける家族と国家/初期フランクフルト学派における『権威と家族』/おわりに
付論1 フランクフルト学派とニーチェ -人間と自然との新しい関わりをめざして
付論2 マックス・ヴェーバーとフランクフルト学派
付論3 「批判的理論」に新局面 -ハバーマス

アドルノのコラージュ
9章 『啓蒙の弁証法』を訳して
10章 『否定弁証法』を読む
11章 アドルノのフッサール批判 -『認識のメタクリティク』をめぐって
12章 アドルノとフロム
13章 アドルノ文庫を訪ねて

変貌と転回
14章 ホルクハイマー再考 -ホルクハイマーとは何者だったか
15章 アドルノ対ハバーマス?
はじめに異質的連続の相のもとに/ミメーシスの両義性/文明と自然との「和解」/「コミュニケーション理論的転回」/ホネットのアドルノ批判/ふたたび異質的連続性の相のもとに
付論 アクセル・ホネットへの質問

鎮魂曲
二人の哲学者の死 -レーヴィットとホルクハイマー
マルクーゼの思想と生涯 -ユートピアにかけた夢と模索
フロム追悼
付論5 ゲルショム・ショーレムの『錬金術とカバラ』


◆本文紹介◆
フランクフルト学派の知的起源はマルクスとフロイトだと言われている。ホルクハイマーの場合にはショーペンハウアー、アドルノの場合にはニーチェというふうに、さらに個性的特色が加わるが、このことはほぼ一般に通じる学派の基本的傾向といえよう。すでに『啓蒙の弁証法』においても、人間は外的自然への支配を内的自然の抑圧をつうじて購ったのだという認識などに、ヒトは後期フロイトの発想の影響を認めることができよう。しかしもともとフランクフルト学派に「フロイト問題」を導入し、三〇年代をつうじてそれを展開する上で主だった役割を果たしたのはフロムであった。…中略…
 フランクフルト学派は、社会学の面では、ありのままの事実を価値評価抜きで研究することに満足する実証主義的態度に反対し、正しい社会はいかにあるべきかという理念に照らして、現実を批判することを課題とする「社会の批判的理論」を旗印とする。こういう立場にもとづいて、ファシズム批判や、後の「管理社会」批判が展開されることになるが、その場合にフランクフルト学派は、従来のマルクス主義のように経済学的説明一本槍で済ませるのではなく、進んで心理学その他の新しい科学を取り入れていこうとする。こういう要求に応えるものとして、マルクスとフロイトを統合しようとしていたフロムがこの学派に迎え入れられたのであろう。この統合の試みは、アドルノたちによっては、進歩の弁証法いう「歴史哲学」的場面で行われたのに対し、フロムにおいては、精神分析の理論を社会現象の分析に適用するという「社会心理学」的な場面で遂行された。


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