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J・エプスタイン著/堀江 洪訳

出版、わが天職
――モダニズムからオンデマンド時代へ


四六判200頁

定価:本体1800円+税

発売日 01.12.10

ISBN 4-7885-0787-0

◆切れば血の出る出版論!
 "Book Buisiness:Publishing Past Present and Future",W.W.Norton & Company,Inc.,New York.2001の翻訳。ニューヨークの文壇を切って回し、ペーパーバック革命に火をつけ、オンデマンド出版による書籍の復興を力強く断言して出版界のグールーと呼ばれているエプスタイン、その新著は世界の出版界に大きな反響をよんでいます。出版という仕事の生命線は何か、今日の出版文化はなぜ、誰によって衰退へと導かれたのか、新しい技術をどう生かすか。どの話題も抽象的に語るのではなく、個性的な出版社や編集者・書店の肖像を通して、フォークナーやドライサー、ナボコフ、ウィーナーらとの興味深いエピソードを通して、さらに自らのIT商法の失敗談を通して、切れば血の出る出版論となっているのが大きな魅力です。

◆書評
2002年1月6日、北海道新聞
2002年1月13日、朝日新聞
2002年1月17日、新文化
2002年1月27日、東京新聞
2002年2月22日、週刊読書人
2002年3月、出版ニュース
2002年3月、編集会議
2002年3月、論座
2002年5月、本の窓
2002年6月28日、週刊金曜日

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◆目次
はじめに
1章 小石のざわめき
2章 地方からきた若者
3章 失われた幻想
4章 それらすべてとの訣別
5章 文化戦争
6章 学者たちの世界
7章 モダン・タイムズ


◆内容 1章より
「一般書の出版は本来、こぢんまりした家庭的産業である。集中をきらい、即興的で、人間味のある産業。それは、自分の職人わざに専念し、自主性を侵すものには用心を怠らず、著者の要求と読者の多様な関心に鋭敏という、共通の心意気をもつ人々の小さな集団で行われるのが一番だ。こういう人たちは、もしも金銭が第一の目標であったなら、おそらく他の職業を選んだ人たちである。他の職業とは、たとえばリテラリィ・エージェントかもしれない。売れる才能を巡って激しく競争している今日の市場では、著者への印税保証額が急上昇するにつれて、多数のエージェントが裕福になっている。だが、私の知っているおおかたの出版人と編集者は、私同様、自らを職人わざ、報酬は仕事そのものであって金銭ではない職人わざに専念する人間であると考えることを好む。

 今日、書籍ビジネスは巨大な変換の境目に立っている。革新に導く多くの機会、すなわち多くの試行、多くの錯誤、そして多くの前進を約束する変換。あと半世紀を待つまでもないごく早い時期に、私が過去五〇年にわたって馴染んできたこの産業は、ほとんど見分けもつかないほどに変わっていることだろう。1920年代、アメリカの才気に富んだ若い世代の出版人は、のちにモダニズムと呼ばれる文化の変換を相続し、この変換を好みとエネルギーと情熱を注いで育てあげた。アインシュタインの世代が現代物理学の諸テーマを決定的導入し、セザンヌやピカソやその同時代者たちが絵画で同様のことをなしとげたように、20世紀初頭の作家たちは現代文学の語彙とテーマを決定的に創造した。多くの推敲が加えられることはあっても、基本的な作業は完成しており、2度とつくられることはありえなかった。出版人としての私の経歴はこの「高踏派」の時期からの長い下り道、しかし決して不毛ではなかった坂道を辿ってきたのであった。

 1920年代の文化の高揚は、すでに道義的、美的、知的欠陥が堪え難いものになっていた文化からの解放の行為だった。少なくとも当時この高揚を担った人々の考えではそうだ。今日、作家と出版人を待ちうけている変換の性質は大きく異なっており、その帰結は当時よりはるかに巨大なものになるだろう。変換は、こんどは文化への絶望や美意識の反乱から生じるのではなく、新しい技術から生じるのであり、それが文化に与える影響は、かつて文明を導くベクトルとなった活字の導入に匹敵する革命性をもつだろう。新しい技術は、活字の導入から500年が経ってここ十数年の間に、だしぬけに活字に取って変わった。グーテンベルグの技術が暗に意味するところが同時代には予見されえなかったのと同様に、われらが時代の新技術が暗に意味するものは今日なお明確ではないが、同じく波乱に富むものになることは確実だ」


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