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A・マクファーレン著/船曳建夫監訳

イギリスと日本
――マルサスの罠から近代への跳躍


A5判520頁

定価:本体5500円+税

発売日 01.06.25

ISBN 4-7885-0767-6

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◆『菊と刀』を越える圧倒的迫力
 1997,THE SAVAGE WARS OF PEACE :England,Japan and the Malthusian Trap,.Blackwellの訳。なぜ、ヨーロッパではイギリス、アジアでは日本が最初に近代への跳躍を果すことが出来たのか? 本書は、この問いをイギリスと日本の生態的条件、民衆文化の底辺から詳細に追求した画期的な研究です。神は細部に宿りたまう――膨大な資料から博捜された微細な生活史的事実が新しい歴史的意味を帯びてパノラマのように展開し、読者は興のおもむくままにページを繰りつつ、おのずと因果の連鎖に導かれ、この両国における近代化の起源という、世界史最大の謎の最も説得的な答えに到達するでしょう。著者はケンブリッジが誇る傑出した歴史人類学者、日本文化論としても『菊と刀』をしのぐ、着想と発見に富んだ大河小説的傑作です

◆A・マクファーレンのおもな著作
『再生産の歴史人類学』勁草書房、北本正章訳、ISBN:4-326-60129-9、1999.11
『イギリス個人主義の起源』(南風社)
『資本主義の文化』(岩波書店・品切)

◆書評
2001年7月15日、熊本日日新聞
2001年9月28日、週刊読書人、見市雅俊氏評
2002年1月、書斎の窓

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目次
1 マルサスの罠
2 二つの島
3 自然環境・文化・人の労働
4 戦争による破壊
5 飢饉の性質・原因とその排除
6 食物と栄養
7 赤痢、腸チフス、コレラと水の供給
8 飲み物――ミルク、水、ビール、お茶
9 人糞処理の二つの方法
10 病原媒介生物による病気――ペスト、発疹チフス、マラリア
11 公共空間――道路、田畑、市
12 住居と健康
13 織物、衣服、履き物
14 身体衛生――入浴と洗濯
15 汚れ・清潔に関する概念の変化
16 空気で感染する病気――天然痘、ハシカ、結核
17 出生率と結婚・性的関係
18 生物学と受胎調節
19 中絶と嬰児殺し
20 後継者戦略
21 意図と偶然


日本語訳への序より
「・・・・・・私の日本との出会いは偶然であったが、日本の物質と人口論に関わる世界が、イングランドと興味深い類似性をもつことで私の関心はより深まっていった。一九九三年の二回目の日本訪問の後、私は日英両国が、共に、出生率と死亡率を通常より低く抑えるような奇妙な「マルサス的」人口システムをもっていた、という謎についての考察を始めた。本書はある長期的な研究プロジェクトの部分的成果であるが、そのなかで私は、この二つの島国の、物質文化と人口論に関わる文化を、過去千年にわたって徹底的に比較してみた。そのことは私が『イギリス個人主義の起源』で探求を始めたイングランドのもつ人口論的特異性を、どのように解き明かしてくれるのだろうか?

 比較を行なううちに、ある一つのことがはっきりと浮かび上がってきた。それは二つの島国の社会・人口論的な歴史は他の文明と比べると非常に特異でありながら、二国間ではじつに似通っている、ということであった。たとえば、日本とイングランドで、戦争と飢饉と疫病を、歴史の早い段階で防止することができたというのは、二国間に共通する諸特徴の原因でもあり結果なのだが、それはとりもなおさず、他の国々との際立った違いになっているのだ。また、いろいろな点で日本とイングランドの物質環境―たとえば、家畜飼育の程度−は異なっているのだが、構造のより深いレベルでは、両国それぞれが持った巧みに調節された人口論的環境は、けがれに対する態度、自然環境のコントロールなど、多くの点についての両者の共通した態度と姿勢から生まれているのだ。

 もう一つ、私の仕事がはっきりさせたことは、この両国が他との間に持つ際立った相違は、究極的にはこの両国が島国である、という事実に戻ってくる、ということであった。私たちが、膨大な偶然的ことがらや、意図されなかった帰結や、因果の複雑な連鎖を細かく調べ上げた後に、この本の最後に得た結論は、もしイングランドと日本が大きな島国でなかったら、二つの国がこうした特徴的な道筋をたどることはあり得なかった、というものであった。この島国性というのは厳密には決定的なものではないが、非常に強力な要因として働いた。たとえば、ある一つの重要な因果の連鎖が島国であることから生まれる。すなわち、外国からの征服やそれへの恐れがないことから、二つの島国には特殊な政治・社会的構造が生まれる。そして、このことはまた人々に、それぞれの大陸に見られるヒエラルキーや絶対主義に向かう傾向を忌避しようという気持ちを強める。なぜなら彼らは、戦争や、巨大な常備軍で自分たちを守ろうといったことを避けよう、とするからである。これは一つの重要な例にすぎない。また、軍隊の略奪や破壊といったことから二つの島国が数百年の長きにわたって逃れることができたことは、経済的な蓄積と、社会に対する信頼を醸成するのに大いに役立った。このように、日本についての研究が、両国の類似性を数々示したことは、私の、数世紀かけてイングランドが大陸から相違するに至ったことについての仮説を補強してくれることとなった。さらに、両国の比較を押し進めることで、私自身の文化(イングランド)のいくつかのことがらについて、より明らかに理解することがでいるようになった。私はこの比較法という、社会科学の理論家たちによって長く実践されてきた方法が、読者自身の偉大な日本文明を、新たな光の下に見出すことを手助けしてくれることを望んでいる」


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