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ダニエル・ネトル、スザンヌ・ロメイン著/島村宣男訳


『消えゆく言語たち』
――失われることば、失われる世界


四六判384頁

定価:本体3200円+税

発売日 01.05.29.

ISBN 4-7885-0763-3


◆目次
はじめに
第1章 消えた言語はいまどこに?
どのようにして、言語は滅びるのか?/いつ、どこで、言語は危機に陥るのか?/なぜ、死んでいく言語を心配するのか? /何ができるか?
第2章 多様性の世界
言語の数はどのくらいあるのか、どこで話されているのか?/言語多様性の温床/言語の危機――どれほどの脅威にさらされているのか/生物・言語多様性――相関する言語世界と生物世界
第3章 失われることば/失われる世界
突然死と自然死/自然死に起こること/失われてゆくもの1――バラに別の名前を?/失われてゆくもの2――私のものは私のもの?/失われてゆくもの3――女、火事、危険なもの/失われた言語、失われた知識
第4章 言語の生態学
楽園のバベル――パプア・ニューギニア/なぜ、かくも多くの言語があるのか?/言語の死に方/何が変わったのか? / 動植物相の波動 /旧石器時代の世界システム/新石器革命/新石器時代以後のさまざまな軌跡/新石器時代の余波
第6章 経済の波動
支配の高まり/経済の躍進/最初の犠牲者――ケルト諸語/発展途上世界への拡散/二重の危機
第7章 なぜ、何かをなすべきなのか?
なぜ保護しなければならないのか? /選択をするということ/言語・開発・持続性/先住民族の知識体系/言語の権利と人間の権利
第8章 持続可能な未来
言語維持のためのボトムアップ・アプローチ――事例研究/小よく大を制す? /二言語併用を怖れるのは誰か? /心を喪失して生きる/生き残るための戦略――天然資源としての言語/いくつかのトップダウン戦略
訳者あとがき/注/文献/索引

◆ことばが均一化する世界への警鐘!◆

Daniel Nettle and Suzanne Romaine,"VANISHING VOICES The Extinction of the World's Languages", 2000,Oxford Univercity Pressの訳。世界には六千もの言語がありますが、そのうちの六〇%は、次の世紀を待たずして消滅すると危惧されています。全地球的な往来と通信が発達した今、英語など世界の共通語がますます普及し、マイナーな言語が消滅していくのは必然ではないか?と考える人も多いでしょう。しかし、言語の多様性が失われていくのは、環境が破壊され、多くの動植物が絶滅の淵に立たされていることと、根を同じくする現象なのです。言語はどのように誕生し死ぬのか、なぜ、英語などの一握りの言語が、かくも圧倒的に他の言語を駆逐するにいたったのかを、言語と生物を取り巻く環境の保全という視点に立ってわかりやすく述べ、多様性のなかにこそ豊かさが宿ることを説得的に示しています。ことばさえもが均一化していく世界を阻止したいという、著者たちからの緊急メッセージです。

内容「第1章」より
「・・・・・・人々は正当な理由もないのに自分たちの言語を放棄はしないものである。譲歩する以外に現実的な選択肢のない、強要によるストレスがずしりとのしかかる社会状況のもとで生じる言語の変更と死の事例がいかに多いかを、私たちは本書全体にわたって示したいと思う。多くの人々が自分たちの言語を話すのを止めるのは、生き残り戦略としての自己防衛のためなのである。
このことをよく示す事例として、1932年のエル・サルヴァドルの出来事を挙げることができよう。農民暴動が起きてから、服装や身体つきからインディオと見なされた者は軍の兵士によって誰彼かまわず検挙され、そして殺された。その数、約二万五千人におよんだという。三年後になってもラジオ放送や新聞は、二度と暴動が起こらないようエル・サルヴァドルのインディオの根絶を声高に求めていた。多くの人々がインディオと知られないように、自分たちの言語を話すのを止めてしまった。・・・・・・1970年代に入ると、皮肉にも、エル・サルヴァドル人の態度、わけても非インディオ系の人たちの態度に、自分たちの文化遺産の喪失を嘆くという逆転現象が生じた。
 ・・・・・・したがって、言語多様性は文化多様性の基準となる。言語の死は文化の死の兆候である。つまり言語の死とともに、生活の形態も消失するのである。言語の運命は話者の運命と密接に結びついている。言語の変更と死は、共同体に加えられる社会・文化・経済・軍事各面のさまざまなタイプの抑圧にたいする反応として生じる。言語は、その特定の機能を果たすのを止めれば、それに変わる別の言語に圧迫されされて衰退する。言語に死が訪れるのは、全体的な機能範囲にわたって別の言語と置き換わり、親たちがもはや子どもたちにその言語を伝達しなくなったときである。本書で明らかにしたいのは、過去において言語の死をもたらしたさまざまな要因が、現在いかに多くの言語をさらに大きく脅かしているかということである」

◆書評
朝日新聞 2001.7.8 木田 元氏評



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