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エイドリアン・ヴィッカーズ著/中谷文美訳


演出された「楽園」――バリ島の光と影


四六判408頁

定価:本体3900円+税

発売日 00.11.10

ISBN 4-7885-0742-0

◆イメージのバリ、バリ人自身のバリ◆
 世界屈指のリゾート地、バリ。バリと言えば、青く透明な海、紺碧の空、エキゾチックな舞踊と儀礼といったイメージですが、一昔前には、蛮行や狂気がこの島の象徴とされていました。オランダ支配のもと、かたやヨーロッパの冒険家、商人、植民地官僚、学者、宣教師、かたやバリの諸王家、芸術家、カーストの底辺に位置する人々。彼らの衝突と交流を単なる歴史物語としてではなく、互いの文化イメージの拮抗として取り上げながら、今日の「楽園」としてのバリが演出されてゆく過程を活き活きと描き出しています。著者は、オーストラリアのウーロンゴン大学準教授、訳者は岡山大学文学部助教授、文化人類学専攻。

◆書評
2000年12月10日、日本経済新聞

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目次
序章 イメージの島、バリ

第1章 野蛮なるバリ
イスラーム世界の片隅にあるヒンドゥー世界/暴君の退廃/新しい時代、古いイメージ/ 最初の征服
第2章 バリ人のバリ・イメージ−黄金時代から征服まで
世界君主−一五〇〇年〜一六五一年/夢物語の王子たち−一六五一年〜一八一五年/祖先 と王朝−一八一五年〜一九〇八年/平民と身分意識/王国は滅びゆく−一八八四年〜一九 〇八年
第3章 「楽園」バリの誕生
オリエンタリストたち/虐殺からセールスへ/ヴァルター・シェピースとパリの田園風景 /メッセージは広まる
第4章 苦境に立つバリ−一九〇八年〜一九六五年
世が太平でなかった頃/社会的軋轢の高まり/第二次世界大戦よその直後 第5章 インドネシアのバリ
スカルノの劇場国家/観光発展/バリ文化への脅威/観光の勝ち組、負け組


◆本文紹介◆
バリの植民地支配とともに、楽園バリという発想の幕開けがあった。バリ在住のヨーロッパ人たちは文化と自然に恵まれた土地というバリ観を自分たちのために作り上げ、まさにそのイメージに見合った暮らしを営んでいた。彼らのあとには第一世代の植民地官僚―インドネシア諸島で生まれ、東インドにたいするほどはオランダ本国には思い入れをもたない人々が、その第一の故郷への愛着を文化的に表現するのにはもってこいの場所をバリにみい出した。植民地支配者に続いては、偏見に左右されない旅行者が世界中からやってきた。国際派の上流階級に属する彼らは、異国情緒あふれる土着の生活に芸術的茂樹を求めたり、二〇世紀初頭の、手垢のついたヨーロッパ文化に代わる新しいなにかを探りあてようとしていた。こうした人々は郊外で優雅ながらも簡素な生活を送った。辺地であればそこそこの財力でも使用人を雇い、自家用車をもち、美術品を収集し、しかもバリ人たちが暮らす小さな村で絵に描いたようなバリ風の家に住むことができた。
 しかめつらしく異をとなえたり、感嘆のあまり目を丸くしたり、旅行者、官僚、学者らがバリの文化と社会にみせた態度はいろいろだったが、彼らがバリについて共通の考えを練り上げてゆき、そこではしなやかな体躯の、胸もあらわな乙女、年端もゆかぬ踊り子たち、そして邪悪な魔女がバリ文化の真髄を表象することになったのだった。(3章 「楽園」バリの誕生 より)


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