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前川啓治 著


開発の人類学

――文化接合から翻訳的適応へ


四六判288頁

定価:本体2800円+税

発売日 00.06.20

ISBN 4-7885-0720-X

◆地球はまだまだおもしろい◆

世界はいまや西欧で生まれた資本主義という「近代世界システム」に覆われ ようとしています。しかしミクロ的にはまったく違って見えることもありま す。本書は、オーストラリアとニューギニアの間にある、トレス海峡という 小さな社会の1960年代以降の変化をたどるフィールドワークです。真珠 採取から伊勢エビ漁への産業の変化を追いながら、政府主導の「開発」をど のように地元の人たちが「翻訳」して適応しているか、「墓石除幕式」とい うキリスト教への適応として生まれた葬送儀礼が、いかに土着の葬送儀礼を 「翻訳」したものであるか、その市場経済的意味などを、詳細に追跡・分析 して、当該社会の視点から見た新しい「開発の人類学」を提示します。

◆書評
読売新聞 2000.8.20 広岡守穂
「エコノミスト」2000.10.17 榊原英資氏評

◆本文紹介◆
私がトレス海峡社会のフィールドワークを通して感じとったことは、たとえどんなに長い期間、外部からの強力かつ広範に及ぶ生活環境への影響があっても、彼らの大半は彼らの世界でものを考えているし、彼らにとってはあくまで彼らの世界での存在のあり様や立場が重要であることに変わりはないということである。むろん、うわべの言説上は外部から来た私に、外部社会つまりオーストラリア白人社会の種々の制度や文化の影響を語っても、その行動を見れば、彼らの目はほとんど彼らの世界内部に向けられていることがわかる。彼等は第一義的にその社会内部の価値にもとづいて行動している。そして、その延長上で、外部からの包摂的な事象や制度に対して、内部の手持ちの類似の概念で「置き換えて」理解している。つまり、「翻訳=読み換え」的な変換を行って理解し、取り入れるのである。彼らは、レヴィ=ストロースの言及したプリコラージュ(器用仕事)的な変換としての対応を、内部の事象に限らず、外部の事象の理解や需要に際しても行っているのである。(「はじめに」より)

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目次

はじめに

第一章 世界システムと人類学
一世界システム論と社会変化論/二地域の文化的「主体性」/三「翻訳的適応」としての 社会変化/四生産と交換に関する政治経済論

第二章 トレス海峡・バドゥー島
一トレス海峡/二バドゥー島の概況

第三章 伊勢エビ業の展開
一トレス海峡における水産業/二伊勢エビ業の組織化における国家の役割/三伊勢エビ漁 興隆におけるバドゥー島民の役割/四バドゥー島民による伊勢エビ漁

第四章 ミドルマン
一ミドルマンとしての企業家の適応/二私企業に対する共同体の反応

第五章 島の経済
一多様な収入源への対応/二バドゥーにおける商品流通の増加/三競覇的消費

第六章 墓石除幕式
一キリスト教の慣習に対する土着の翻訳=読み替え的編入/二墓石除幕式の変容

結論 伝統文化の持続と市場経済への翻訳的適応



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