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D.A.ノーマン 著 野島久雄 訳

誰のためのデザイン?
――認知科学者のデザイン原論

誰のためのデザイン? 増補・改訂版 へ


四六判456頁

定価:本体3300円+税

発売日 90.1.25

ISBN 4-7885-0362-X




◆機械音痴は誰のせい?
MITの博士でさえ戸惑う悪しきデザインの例,例,例…。日常の道具から巨大装置まで,使いにくく,ミスを生みやすいデザインが満ちあふれているのはなぜか。それをどう改善すべきか。第一級の認知心理学者がユーモアたっぷりに論じた痛快な本。

誰のためのデザイン? 目次

誰のためのデザイン? 日本語版への序文

ためし読み

◆他、ノーマン著作
『テクノロジー・ウォッチング』
『人を賢くする道具』
『パソコンを隠せ、アナログ発想で行こう!』
『エモーショナル・デザイン』
『未来のモノのデザイン』

◆ノーマンのサイト

◆書評
1997年12月、izumi「バリアフリーとユニバーサルデザイン」古瀬敏氏評
2002年10月号、NEXT ENGINEER vol.04
2008年12月号、日経WOMAN、小山氏評
2012年6月17日付、朝日新聞、吉田ひろし氏評

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誰のためのデザイン? 目次

目次
日本語版への序文
はじめに
謝辞
研究に対する援助
協力してくれた人々

第1章 毎日使う道具の精神病理学
これを理解するのは工学士の資格が必要です/毎日の生活の中の不満/毎日使う道具の心理学/理解しやすさと使いやすさのためのデザインの原則/あわれなデザイナー/技術の逆説

第2章 日常場面における行為の心理学
自分を責めてしまうという誤り/毎日の生活の中の思い違い/間違ったことのせいにしてしまう/人間の思考と説明の性質/人はどのように作業をするか――行為の七段階理論/実行と評価におけるへだたり

第3章 頭の中の知識と外界にある知識
不正確な知識にもとづく正確な行動/記憶は頭の中の知識である/記憶は外界にある知識でもある/外界の知識と頭の中の知識の間のトレードオフ

第4章 何をするかを知る
日常場面に存在する制約の分類/日常場面の事物にアフォーダンスと制約を適用してみる/可視性とフィードバック

第5章 誤るは人の常
スリップ/思考のエラーとしてのミステーク/作業の構造/意識的な構造と意識的でない行動/エラーに備えてデザインする/デザインの基本的な考え方

第6章 デザインという困難な課題
デザインの自然な進化/なぜデザイナーは正しい道から外れてしまうのか/デザインのプロセスの複雑さ/蛇口――デザインの難しさを示すケースヒストリー/デザイナーを脅かす二つの致命的な誘惑/コンピュータシステムの弱点

第7章 ユーザー中心のデザイン
難しい作業を単純なものにするための七つの原則/わざと使いにくくする/デザインと社会/毎日の道具のデザイン


関連する書物
訳者あとがき
文献
索引


誰のためのデザイン? 日本語版への序文


まわりを見回してみてください。私たちのまわりは、暮らしを過ごしやすく、より楽しいものにしてくれるたくさんの工業製品であふれています。本、台所用品、電話、そして、テレビ、ゲーム、家庭用や事務用のコンピュータ。ところが、その多くが私たちの暮らしのいらいらの種となっているようです。暮らしは、過ごしやすくなるどころか、難しくなっています。あなたの暮らしは必要以上に複雑なものとなっているようです。あなたの暮らしは、必要以上に複雑なものとなってはいませんか。洗濯機を使おうとして困ったことはありませんか。電子レンジの全機能を使いこなしていますか。VTRの録画予約をすることができますか。こうした難しさで困ってはいませんか。
 上野駅からJR線を経由して私鉄の駅へ行くための直通切符を買おうとしているとしましょう。そのためには、何をしたいのかを前もって正確に分かっていなければなりません。でも、上野駅へは初めて来た人の場合はどうでしょうか。どう乗り換えたらいいかは非常にわかりにくいのです。ある一定の金額の切符専用の発券機もありますし、五〇〇円玉が使えない発券機もあります。同じ駅にあっても、発券機によっては動作の仕方が違ったり、切符を買うために必要な情報を異なる順序で聞いてきたりします。なにもかも、本来あるべき状態よりもずっと難しくなっていて、たいていの人は対応できないのです。正直に言えば、これはまったく正気の沙汰ではないと思います。どうしてこんな状態に我慢していなければならないのでしょうか。デザイナーには、こうした機械を使うユーザーのことなど目に入っていないようです。
 居間を見てみましょう。日本では多くの家庭の居間にオーディオセットとビデオセットが置いてあります。とてもすばらしいものです。でも、このすばらしさの大部分がまったく使われていません。そしてこのような装置が家庭の中にのさばっていて、狭い日本の家庭の居間で大きなスペースを取っています。こうした機器はますます複雑化しています。それぞれリモコンが付き、そのリモコンは他のリモコンとは異なるのです。なんという混乱でしょう。
 もう事態を変えるべきです。消費者は反乱を起こすべきときです。私たちの暮らしがこんなに複雑である必要はありません。この問題はあなたのせいではありません。このひどい製品を作ったデザイナーとメーカーのせいです。とはいえ、あなたのせいでもあります。こんなにいらいらさせるような製品をなぜ買いつづけたのでしょう。
 この本の目的はデザインの問題に対するあなたの意識を高めることにあります。そして、ものを改善することに対しても興味をもってほしいと思います。望むらくは、この本がきっかけで、暮らしに関するさまざまな問題に対して、そして人が何を必要としているかに対してあなたが敏感になって、その結果として暮らしを変えるようであってほしいと思います。さらには、その過程で、人の心に関する新しい科学である認知科学の原則のいくつかを学んでほしいと思います。
 この本に出てくる例のほとんどはヨーロッパとアメリカのものです。でもひとごとだと思ってはいけません。同じ問題が日本にもあるのです。今や日本はハイテク製品の製造国としては世界のリーダーです。ですから、そういう製品をつかうごく普通の人のためにデザインをしたり、使いやすく、使って楽しいものを作ることにおいて先導的な役割を果たすべき責任もあります。現在、日本は技術においては先を走っています。しかしながらユーザの必要とするものを考慮するという点においては、ヨーロッパやアメリカの先導的なメーカーに比べ、はるかに遅れています。今こそ科学としての心理学に真剣に耳を傾けるべきときです。ちょっとした手助けでみんなの暮らしがより楽しいものになるのです。
 私の研究仲間である野島久雄さんがこの本『誰のためのデザイン?』を日本語に翻訳することに同意してくれ、新曜社が出版してくれたことを喜んでいます。
 何度にものぼる日本訪問は、楽しくためになるものでした。そのために御尽力いただいた数多くの日本の友人に感謝いたします。とりわけ、三宅芳雄博士と三宅なほみ博士がいつも快く迎えてくれたことに感謝します。今私は、東京の三宅夫妻の家の居間にあるコンピュータで、私が書いたようなさまざまな問題に取り巻かれつつ、この序文を記しています。奇妙な操作法の水道の蛇口もあるし、居間にはオーディオアンプ、ラジオチューナー、VTR、レーザーディスクプレーヤー、テレビ、電子ピアノの鍵盤、コンピュータ、そしてもちろん、任天堂のファミコンもあります。どれもとても素晴らしいけれども、同時に不可思議で、混乱を招き、いらいらもさせるもので、本書の完全な見本集ともいうべきものなのです。

 1989年9月
 東京にて
 ドナルド・A・ノーマン


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