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『美容整形と化粧の社会学』――プラスティックな身体

谷本奈穂

●著者メッセージ
 美容整形は、自分の身体を傷つける「病理」として、あるいは女性が美しさを強要される「美の神話」として、批判されることがあります。もう一方で、女性の「自己決定」につながるものとして賞賛されることもあります。本書は、そのどちらの立場も理解しながら、しかし違ったアプローチをとっています。すなわち、美容整形を、私たちの身体意識を先鋭的な形で表した現象としてとらえ、それを分析することで「現代人のアイデンティティ」の一側面を探ろうとするのが本書の立場です。

 具体的には二部構成をとっていて、一部は美容整形に関わる議論(書き下ろし)、二部は化粧品広告に関わる議論(博士論文「化粧品広告における身体のイメージ」の一部を大幅に加筆修正)をしています。一部と二部はいずれも美的身体を通じた私たちの意識をあぶり出していくものです。また、最後に補論(お菓子のおまけのようですね)として韓国、台湾、ドイツでの美容調査も紹介しています。国によって違うところ・同じところがあることも読んでいただければと思います。

 さて、第一部では、美容整形に関する理論研究の整理、1365名へのアンケート調査、美容整形実践者へのインタビュー調査(総計26名のうち日本人8名)を考察しています。アンケート調査からは、1.美容整形が特殊なものではなく一般的な身体意識と地続きの現象であること、2.「コンプレックスを解消するため」、「異性にもてるため」だけではなく、「自己満足のため」に行おうとする人が多いこと、3.「自己満足」という理由は、「女性」、そして「外見に自信のある人」によく使用されることを見いだしました。そのアンケートの結果を受けながら、インタビューでは、外見のよい女性の美容整形経験を、ある意味で、私たちの身体意識を表すものとしてあぶりだしていきます。インタビューから見いだせた特徴はたくさんあるのですが、整形しても自分は変わってないと主張する点、その際に想像上の他者評価と想像上の自己像が重要になる点、その想像力はモノによって支えられる点がおもしろい点でしょうか。

 第二部では、化粧品広告6030点を概観することで、「美しさについての意識」がどう変容してきたかを探ります。そして意識の変容が、第一部で語ってきたような美容整形の普及とリンクしていることが示されます。

 本書は、美容という事象を通して、現代的なアイデンティティを模索する試みでした。そこで見いだせた現代的なアイデンティティは、次のような特徴をもつといえます。一つは、自分の存在基盤を「心」や「身体」に宿らせるというより、「行為」や「ちょっとした感覚」に宿らせるものであること。もう一つは、自分を対象化して自己評価をする時に、「他者の視線」が重要になるだけでなく、人間と同等のアクターである「モノ」や「技術」によって支えられた「自分自身の想像力」が重要になること。こういったアイデンティティのあり方が、従来のアイデンティティ論に新たなパースクペクティブをもたらせられれば幸いです。

美容整形と化粧の社会学書影



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